村上春樹久しぶりの短編集、『東京奇譚集』。新刊が出るたびに書店はお祭り騒ぎ、壁じゅう春樹。って『ノルウェイの森』から18年ですからすごいことですよね。
それでも最近の作品はなかなか心にストンと落ちてこなくて寂しい限り。春樹の変化についていけてないのか、僕から何らかの切実さが揮発したのか? 『東京奇譚集』も引きずり倒されることなく読み終えてしまいました。
この前、DVDで『トニー滝谷』観たんですよ。やはり春樹の短編で、『レキシントンの幽霊』に入っていた作品を映画化したもの。イッセー尾形と宮沢りえの好演と、原作の雰囲気を正しく再現しようとする演出で、「小説を読んだときに生じた感情と、まったく同じものが湧き出る」という感覚を味わいました。なかなかに稀有なこと。
で、映画のラストに「あれ?こんなラストだっけ?」という引っかかりがあって、押入れのダンボールを漁って『レキシントンの幽霊』を探したんだけどこれが見つからない。どうやら今の部屋に引っ越してくるタイミングで処分した模様。
つまりは「持ってなくていい」と判断したわけで、このままだと『東京奇譚集』も「持ってなくていい」ルートを辿りそうです。春樹の短編だったら、例えば『中国行きのスロウ・ボート』なんかは「常に手元に置いておく」地位を保ってたりするのですが。僕が、年を取ったという単純にそれだけのことなんでしょうか・・・。